読み終えるのが惜しくなる、死者の朗読会

『人質の朗読会』
小川洋子

南米を旅行中にゲリラ事件に巻き込まれた8人の人質。その全員が死亡してしまうというショッキングな事件からこの物語は始まります。
やがて発見された朗読テープにより、この世にもう存在しない彼らの人生が明かされます。
欠けたビスケットをベルトコンベアーから拾い上げる仕事をしている製菓業の女性、談話室で開かれる奇妙な集会に足を運ぶ男性、片目の老人が作るぬいぐるみに心惹かれる少年、それぞれの話はどれも幻想的で美しいのだけれど、それらが死者の声によって語られているというシチュエーションが、物語の緊張感と神秘性を一層引き立てます。
最後の一人が語り終えるその瞬間まで、どっぷりと小川洋子の世界に浸れる一冊。