精神医療の暗闇にメスを入れるSFミステリ

『エクソダス症候群』
宮内悠介

地球で出世の道を絶たれ、生まれ故郷である火星に帰ってきた青年医師カズキ。彼は亡き父が勤務していたゾネンシュタイン病院に着任しますが、1日目にして11棟あるうちの1つの病棟長に抜擢されます。
ベッドもスタッフも薬も、何もかもが不足している環境の中で、自らも何らかの疾患を抱えているかも知れないという恐怖と闘いながら、イツキが辿りついた真相とは――?

火星が舞台となっても、『盤上の夜』からの数々の文献が織り込まれるスタイルは健在。
ともすれば陰鬱で重苦しくなりそうなテーマを扱いながらも、決してへこたれない主人公が切り拓く未来に、すっきりとした読み心地の一冊。