いろんな人の人生に思いを馳せてみる

『秋の街』
吉村昭

殺人その他の罪で無期懲役を言い渡され、長い刑期を経て仮釈放の身となった囚人の男、死期が近づき、身よりもない故郷に帰りたいと願う病人を運ぶ運転手、変死を遂げた人の解剖を専門に行う検査技師、実験用のマウスを飼育し続ける研究所の所員、愛する人に先立たれたわけあり風の親子、漂流し陸地に戻れなくなった漁船の船員。
それぞれ異なる事情を抱えた人々の生活を、静謐な文体で書き綴った短編集。
彼らは私たちとは縁のない、まるで別世界に生きている人間のように見えるけれども、誰もが死にゆく運命にあるという点で同じなのだと思った。