悲しい鬼の末路

『孤島の鬼』
江戸川乱歩

前半は謎解きがメインのミステリー、後半は犯人の居城に乗り込む冒険譚。表題の“鬼”になった犯人の生い立ちは悲しいけれど、多くの人間を不幸の底に陥れた悪事の数々に同情の余地はない。最後は一応の大団円を迎えるが、彼によって運命を狂わされた人の命は戻ってこないのだし。
なんとなく腑に落ちないのは、主人公の蓑浦が周りの人間に頼ってばかりの情けない男であること。何故か女からも男からもモテる蓑浦は、それを自覚しながら多くの人間を巻き込んでいくのだ。彼こそが鬼なのかもしれない。